2018年米国の貿易に関する動き

2018年12月4日

アメリカの大統領トランプ

彼の大胆な外交政策に色々な国が翻弄された。しかし、髪型をコントロールするのは苦手のようだ。

2018/12/16 対中関税引き上げ時期について追記

2018年の米国の貿易に関するトピックは、通商拡大法第232条の適用による関税の引き上げ、中国に対する関税措置、その他の貿易交渉の三つに分けることが出来る。
それぞれ順に解説する。

目次

通商拡大法第232条の適用による関税の引き上げ

通商拡大法第232条とは米国の輸出市場拡大を目的に、大統領に対し関税に関する一定の権限を付与する法律。
その第232条では安全保障上の脅威を理由として、貿易相手国に対し、制裁を行うことを認めている。
尚、世界貿易機関(WTO)の協定、関税及び貿易に関する一般協定(通称GATT)では、譲許税率(協定によって定められた税率の上限)を超える関税の賦課や譲許税率の一方的な引上げは禁止しているが、GATT第20条および第21条で例外を認めている。そのうち、第21条は安全保障にかかわる例外であり、米国はこのGATT第21条を根拠に自国の今回の行動を正当化していると考えられる。

時系列で見た通商拡大法第232条に関わる関税引き上げ

2017年4月19日、鉄鋼、26日にアルミの調査を開始した。
2018年2月16日、調査結果報告・勧告を公表。
2018年3月23日、追加関税を賦課(ふか)。鉄鋼25%、アルミ10%。
2018年5月23日、新たに自動車野での第232条調査を開始。
2018年6月1日、鉄鋼・アルミにおいて、暫定的に追加課税を除外していたメキシコ、EU、カナダに対し、措置を発動。

このような米国の動きに対し、各国はWTOセーフガード協定に基づき、対抗措置を取った。セーフガード協定とは、WTO加盟国が「ある産品の輸入が国内の競合する産業に重大な損害を与えると判断した時に発動できる措置」のことである。
米国としては「安全保障上の脅威」として関税を引き上げ、他国はあくまで過剰な輸入によって米国の国内産業が脅かされているとの見解である。ここで安全保障の定義とは何かが疑問になってくるが、前述のGATTの中では明確に定義されていない。安全保障と言うと国防上の問題が真っ先に想起されるが、米国はまた違った文脈で安全保障を捉えているように見える。

 

中国に対する追加関税措置

中国に対する追加関税措置は先ほどの通商拡大法232条とは異なり、通商法第301条を根拠としている。
この米国通商法第301条は大統領権限により、米国にとって不公正な貿易慣行に対して、米通商代表部(USTR)が調査および制裁措置を取る権限を与えるものである。本条約による措置は通商拡大法第232条とは違い、WTO協定との関連性は薄く、より強硬なものと考えられる。

時系列で見た中国に対する追加関税措置と中国の対応

2018年6月15日 米国の動き

中国からの輸入品1102品目(500億ドル相当)に25%の追加関税を課す方針を発表した。

2018年6月16日 中国の動き

米国からの輸入品545品目(約340億ドル相当)に、7月6日から25%の追加関税を課すことを発表した。その他、医療機器等114品目(160億ドル相当)についても措置を検討する旨発表した。

2018年7月6日、10日 米国の動き

7月6日に6月15日に発表した追加課税を行う予定の中国からの輸入品1102品目のうち、818品目(340億ドル相当)について措置を発動。
また、7月10日に中国製品2,000億ドル相当に追加関税を課す案を発表。

2018年7月6日、8月3日 中国の動き

6月16日に発表した輸入品545品目(約340億ドル相当)に、25%の追加関税措置を発動。
また、8月3日に米国からの輸入品5207品目(600億ドル相当)に5~25%の追加関税を課すことを発表した。

2018年8月23日 米国の動き

6月15日に発表した284品目(160億ドル相当)の輸入品目リストのうち、279品目(160億ドル相当)に対して、追加関税措置(25%)を発動。

2018年8月23日 中国の動き

6月16日に発表した米国からの輸入品333品目(160億ドル相当)に対して、追加関税措置(25%)を発動。

2018年9月24日 米国の動き

7月10日に発表した5,745品目(2,000億ドル相当)に実際に追加関税措置(10%)を発動。これらの品目については更に次年度1月1日から同関税率を25%に引き上げる予定となっていた(※後述)。

2018年9月24日 中国の動き

8月3日に発表した600億ドル相当の輸入品に追加関税措置(5~10%)を発動した。

2018年12月1日 米中首脳会談

米国が年明けに予定していた中国への追加関税(2018年9月24参照)を猶予することを合意。しかし、米国は90日以内に中国の構造改革について合意できなければ関税を引き上げる予定。

2018年12月14日 米国の動き

米通商代表部(USTR)は上記中国製品への追加関税引き上げ時期について、2019年3月2日と正式に発表。
ちなみに、12月1日、中国の通信機器大手、ファーウェイのCFOが米国の要望により、カナダで拘束された。11日、カナダはファーウェイCFOを保釈。13日、中国は国内のカナダ人二名の身柄拘束を10日に行ったと発表。本件との関係性は不明だが、今後も米中は緊張した関係が続くと予想される。

 

その他の貿易交渉

日米物品貿易協定(TAG)交渉の開始について合意

日本と「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議(FFR)」を開始。また、2018年9月26日に行われた日米首脳会談にて、日米物品貿易協定(TAG)について交渉を行うことを合意した。
TAGの対象は主に工業製品や農林水産品となり、知財や投資等の関税以外の分野も協議する経済連携協定(EPA)、物品およびサービス貿易の自由化を目的とする自由貿易協定(FTA)よりも限定的な協定となる。

米EU首脳会談にて両国が自動車を除く工業製品の関税等の撤廃に向け取組むこと等に合意

2018年7月25日に行われた米EU首脳会談において、以下の内容を含む声明が出された。

  1. 自動車を除く工業製品の関税、非関税障壁、補助金の撤廃への取組とサービス、化学製品、医薬品、医療機器、大豆の貿易障壁を削減、貿易の拡大への取組
  2. エネルギーに関する戦略的協力の強化
  3. 貿易における官僚主義的障壁、コストの削減に向けた緊密な対話の立ち上げ
  4. WTOの改革
  5. これらの議題を話し合うための「上級作業部会」の立ち上げ
  6. 鉄鋼・アルミの関税措置問題の早期解決

米墨加でUSMCA(新NAFTA)に調印

2018年11月30日、米国、メキシコ、カナダは北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる貿易協定、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に調印した。協定のうち、いくつかの項目は即時発効となるが、大部分は各国の議会での批准が必要となる。
USMCAでは、自動車貿易において、関税を撤廃するために域内での部品調達率の引き上げることや、物品についてゼロ関税や割当枠による無税措置等が盛り込まれている。
また、本協定の内容の一部は、今後米国が日本と結ぶ協定の基礎となることが予想されている。その観点から注目されている点として、加盟国が中国等の非市場経済国とFTA交渉を開始する際に他の締結国に通知する義務を課し、通知を受けた締結国は本協定を終了させることが出来る権限を与えることや、為替条項として加盟国が不正に通貨安誘導を図ることを防ぐ内容が盛り込まれていることが上げられる。