食い合わせの読書:カズオ・イシグロ「日の名残り」國友公司「ルポ西成~七十八日間ドヤ街生活~」

2018年11月14日

ハルキ・ムラカミを読もうと書店に入りイシオ・カズグロを手に取る

今年のノーベル文学賞の発表は見送り・・・・村上春樹氏の受賞を祈る人々の戸惑いの声・・・

そんなニュースを視た直後、ふらりと書店に寄った。
なんとなく村上春樹氏の本を読みたくなったのだ。
最後に読んだのは数字の羅列がタイトルになったものだったか、それともねじまき鳥クロニクルだったかですら定かではない。
特徴ある文体だったのは思い出せるのだが、どんな特徴だったのかを思い出すことが出来なかった。ストーリーに至っては全く思い出せない。
主人公がもったいぶった感じにも関わらず、非常にチャラい・・・プレイボーイであるという印象しかない。この部分だけを思い出すと、中年男性の欲求不満を解消するための物語のような感じすらしてくる。
どんなストーリーかちゃんと思い出して、きちんと小説を評価したい。
私は村上氏の小説を探した。
しかし、その書店は秋葉原構内にあり、売り場面積も狭い店であった。アキバの住人からはあまり受けが良くないのか、それとも今は新刊も出ていないからか、村上春樹氏の本は無かった。
代わりにノーベル文学賞受賞者であり、かつ日系のイシオ・カズグロ氏の本は置いてあった。
ノーベル賞つながりという、なんだかよくわからない理由で私はイシオ・カズグロ氏の「日の名残り」を購入した。
「日の名残り」は簡単に言えば執事スティーブンスが昔を回顧しながら、昔の仕事仲間のミス・ケントンに会いに行く物語である。
レビューはネット上に売るほどあるので、そちらを見る方が良いだろう。
wikipediaにあらすじはあるが、それで読んだ気にならないほうが良い。
あの小説の良さの一端は、いかにも執事っぽいうやうやしい感じの文体にある。
イシオ・カズグロ氏は現職の執事なんじゃないかと思うほど。
ただ、読み始めはその文体ゆえに退屈に感じられるかもしれないので注意。頑張って読み進もう。

読売新聞の一面に出てきた西成の文字

休日の読売新聞朝刊には、一面の下の方に出版社の新刊案内が並んでいる。
そこに並ぶタイトルは、書店で平積みされないようなニッチなモノも多く、面白い。私の小さな楽しみである。
その中に一際目立つタイトルがあった。
それが「ルポ西成~七十八日間ドヤ街生活~」である。
西成・・・昨年大阪に行った時の記憶がよみがえる。
大学時代の友人とイベントを行うために大阪に行ったのだが、時間が空いたのでどこかに行こうという話になった。
二人のうち、どちらが言ったのか確かではないが、「西成」に行くことになった。
私はSHINGO☆西成というラッパーが好きだった。彼のラップの中には西成の情景を唄ったものもある。
私はその程度の知識だったが、友人は西成に何回か行ったことがあり、ワクワクした様子だった。
それを見て私も気軽な気持ちで西成に向かった。

その地に足を踏み入れると今まで感じたことのない雰囲気が漂っていた。
商店街なのだろうか。複数の店が並んでいた。
焦げた肉の臭いがする。
あたりを見回すと、店頭に鉄板を出し、肉を焼いている店があった。
それを囲む男達。昼間から赤ら顔である。
商店街はアーケードになっており、薄暗い。
突然の怒声。
50代の男二人が取っ組み合いの喧嘩をしている。
さらに商店街を進むと、居酒屋が多くなり、カラオケの音が漏れてくる。
街角にある自販機には賞味期限切れのジュースが売っている。

「ルポ西成~七十八日間ドヤ街生活~」は著者が実際に西成の町に住み、働き、その場で生きる人々の生活を追ったルポタージュである。
西成がなぜあのような雰囲気を醸し出しているのか、興味がある人は手に取るべき一冊だ。

執事スティーブンスをドヤ街の住人に会わせてみる妄想

さて、全く縁もゆかりもないようなこの二冊である。
方や貧困層の実生活を描写したノンフィクション、方や貴族によりそう執事の人生を描いたフィクション。
私はこのような180度方向性が違う本を二冊続けて読むのが好きだ。
何故か。
それは妄想をするためである。
お堅い執事であるスティーブンスは主人のドヤ街の自由奔放な住人に合わせたらどうなるか・・・
スティーブンスがドヤ街の住人にミス・ケントンの面影を感じ、恋に落ちたら・・・
スティーブンスが何らかの理由で飯場に入ることになったら・・・
スティーブンスがユンボを運転することになったら・・・
逆にドヤ街の住人がダーリントンホールの執事になったとしたら・・・
ドヤ街の住人がダーリントンホールで行われた重大イベントに手違いで招かれてしまったら・・・
みたいな妄想をする。
この妄想が私のクリエイティビティの源泉ともなっている。
まあ、創作活動は(今のところ)行っていないので、仕事や私生活のどこでそのクリエイティビティが活かされているかは疑問ではあるが。

TIPS 信頼できない語り手

尚、カズオ・イシグロ氏は「信頼できない語り手」という手法が得意で、「日の名残り」でもその手法がいかんなく発揮されている・・・とのこと。
「信頼できない語り手」手法といえば、ホットラインマイアミである。