悪戦苦闘するドローン企業、3Dロボティクス ~「メイカーズ」クリスアンダーソンCEOの理想と現実~


メイカーフェア、楽しかったです。

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3Dロボティクスの墜落

3Dロボティクスはベストセラーとなった「ロングテール」、「フリー」、「メイカーズ」を著作した元Wired編集長、クリスアンダーソンが2009年に設立した会社である。
ドローンのハードウェア製作を主な事業とし、今までにトータルで1億ドル以上の出資を受けるなど大きな注目を浴び続けてきた。
しかし、昨年末頃からカリフォルニア州にある施設閉鎖や、本部等の人員削減を行うなど、事業は前途多難の様相を示している。
そして、2016年6月には、『出資』ではなく、『借入』でNautilus Venturesより、2600万ドルの資金を獲得した。
株式による資金調達が必ずしも最善の方法とは限らないが、借入では利子の負担や一定期間で返済を行わなくてはいけないこともあり、今後3Dロボティクスの経営はよりシビアになることが予想される。

無邪気なクリスアンダーソン

3Dロボティクスは当初、ドローンのパーツだけを扱っており、完成品の販売は行っていなかった。
「メイカーズ」を読むと彼の当時の考えが良くわかる。
本の中では、3Dプリンターのような高度な工作機械と手軽に扱えるマイコンの普及と、インターネットのコミュニティによる共同的な開発がイノベーションを次々と生み出す未来が書かれている。
その中に、「アルディーノ」というマイコンの話が出てくる。「アルディーノ」はその基盤の設計図が公開されており、これを利用してコピー品を売るメーカーが多数存在する。
しかし、ブランド力によって結局は顧客は「アルディーノ」を選ぶ。そして、他社やユーザーによって基板設計が改良されれば、それを率先して取り入れて、より良いプロダクトを製作することができる。
「情報を公開すれば、ハードが売れる。」
この信念を元に、クリスアンダーソンは、積極的に製品の内部設計等を公開し、コミュニティが活発化するように仕向けてきた。
3Dロボティクスが完成品のドローンを販売し始めたのは2012年のことである。DJIやparrotといったメーカーの躍進を目の当たりにして、市場に大きな期待を抱いたに違いない。
同時にベンチャーキャピタルから多額の投資を受けるようになり、一般消費者向けの商品開発・販売にまい進していく。また、クリスアンダーソンは今まで勤めていたWired社を退職し、本格的に事業に取り組むようになる。

期待をかけた新機種の失敗

2015年4月、同社は満を持してSoloが発売された。
しかし、価格は他社の同程度の性能を持つ機種より50%以上高く、かつ、それら他社の機種に比べると、多少機能的に劣るなど、消費者からすれば魅力のないものであった。
唯一、設計情報が公開されているため、カスタマイズのしやすさと言うメリットはあったが、一般の人がドローンに何を求めるのだろう。
大抵の人は簡単に飛ばすことが出来て、空からの映像をそれなりに撮影できれば満足だろう。
ドローンは、マイコン「アルディーノ」のように汎用性があるものではない。
その後、3Dロボティクスは大幅な値下げを余儀なくされた。

3Dロボティクスの今後

3Dロボティクスは、今後、産業用向けへとターゲットをシフトするようである。3月にはSonyやAutodeskとの連携を発表、6月にはAutodeskが保有するファンドから3Dロボティクスに投資を行うことを明らかにした。
おそらく、そこにはクリスアンダーソンが「メイカーズ」で描いたような世界は待っていない。