TPPは関係ない。これからの時代にどのように農作物を作り販売するのか -ルビーロマンを参考に-


「農民」から脱却せよ

高付加価値をどうつけていくか

米国の大統領がヒラリーでもトランプでもTPPの雲行きはあやしい

加盟国間で関税や規制を大幅に撤廃し、より自由な貿易を目指すTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が世の中の話題になって久しい。国民が大きな関心を寄せる中、アメリカの大統領選挙では次のようなニュースが取り上げられている。

ヒラリー・クリントン前国務長官は27日、オハイオ州での政治集会で演説し、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような悪い貿易協定にノーということで米国の雇用と労働者を守る」と述べた。

クリントン氏「TPPにノー」(産経ニュース)より

 

トランプ氏が6月28日にペンシルベニア州で経済政策について演説を行った際に、「アメリカはレイプされ続けている」などと激しい言葉で、TPPを非難した。

「アメリカはレイプされる」 トランプ氏がTPP脱退を表明(ハフィントンポスト)より

これを聞いて、「しばらくTPPが締結されることはないだろう」と胸をなでおろしている農業事業者もあることだろう。

しかし、これはモラトリアムに過ぎない。
いつの日にか、自由貿易化の波はやってくる。いつか日本と言う「国」からの保護が全くなくなる日がやってくることを覚悟して、経営を考えなければいけない。

結局高付加価値化しかない

貿易の自由化で海外の安い農作物が大量に輸入されてくる。

そんな状況にどう対応するかといえば、消費者に高い値段でも納得してもらう価値を付けるしかない。

では、高い値段でも納得してもらえる価値=高付加価値をつけるにはどうすればよいか。

ルビーロマンに見るブランド化戦略

石川県が開発した高級葡萄、「ルビーロマン」が初競りで110万円の値を付けた。

1房110万円も 高級ぶどう ルビーロマン初競り

何故、そんな高価格で葡萄を販売することが出来たのだろうか。
その本質はシンプルである。
大まかにいえば、「独自の商品開発」「販路の確立」の二本柱が葡萄の高付加価値化、ブランド化を可能としたのである。
その流れは以下の通りである。

①新しい品種の開発

高付加価値を付けるための第一歩は、今、どこにもない品種を創ることである。
いきなりハードルが高いと感じる方もいるかもしれない。
しかし、この「どこにもない」とは必ずしも「おいしい」ということを指すのではない。
「おいしい」という基準などどこにもない。トマトで「甘い」ことを売りにする品種があるように、特定の味覚に訴えるものがあれば良い。さらに言えば、特定の味覚でなくても良い。
「赤ワインに合う」とか、「肉料理に合う」という視点でも良い。
他の品種にはない特徴、かつ、消費者に好かれる特徴があれば良いのである。

ルビーロマンは、この独自の品種を生み出すために「藤稔」という品種から採取した種、400粒を撒いた。
そのうち実を付けた4本から、消費者にとって価値があると認められた1本が「ルビーロマン」として採用された。
400粒を撒いて品種を選定するには確かにコストがかかる。
これは農業に限った話ではないが、新しいコトを始めるには投資が必要だ。

②品種の防衛

消費者に好まれる品種を見つけただけでは、商品化するにはまだ早い。誰かに真似される恐れがある。
製造業界では一般的な話だが、法律によって、自分が開発した品種を独占する権利を守らなくてはいけない。
種苗法に則って申請を行い、品種が他の地域に不当に拡散するのを防ぐのだ。

③事業者間での防衛

法律で権利を守っても、農家から苗をこっそり他の農家に分けられてしまったら、面倒なことになる。それも海外の農家に渡ってしまったら・・・。
それを防ぐために、石川県は栽培農家との間で第三者に苗を譲渡しない内容を盛り込んだ誓約書を交わすなど苗木の流出を防ぐ対策をとった。

④販路の確立

単に良い商品を作っただけでは、売れない。これは製造業では散々言われてきたことである。

良い商品であることをユーザーにアピールしなければいけない。ブランドイメージを形作るためのロゴやパッケージ作成、プレスリリース等の活動を行わなければいけない。
それに加え、実際に販売する先を確保するための宣伝活動を行わなければいけない。

ここで述べた「高付加価値化」へ向かうプロセスは、険しい道である。たやすく実行できるものではない。
しかし、大きく変化する環境に対しては、まさに「生まれ変わる」ほどの覚悟が無ければ生き残りは図れない。